【技能 | 就労ビザ許可のポイント-1】海外からシェフを招聘する場合
Mach 4th 2021 Updated
このページでは、「技能」の在留資格/ビザで海外からシェフ/料理人を招聘する場合のポイントを説明します!
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格/ビザが、大学・専門学校で学んだアカデミックな知識を生かす職種に該当するのに対し、「技能」の在留資格/ビザは、仕事を通じて学んだ熟練した技術を生かす職種に該当します。
外国料理のシェフ、ワインのソムリエ、建築技術者、パイロット、スポーツインストラクターなどが例として挙げられますが、圧倒的に多いのが外国料理のシェフです。
2019年現在、約1.5万人の外国人が「技能」の在留資格で、外国料理のシェフ/調理師やワインソムリエとして働いています。
参考資料:
外⾷業分野における新たな外国⼈材の受⼊れについて
農林水産省食料産業局
「技能」の在留資格/ビザでは日本料理店では働けません!
「技能」の在留資格/ビザでシェフとして働くためには、業務内容が、外国において考案されて我が国において特殊なものを要する業務、であることが必要です。
原則として、日本で考案された日本料理の調理は日本人にやってもらい、日本人にとって特殊な調理技術を要する外国料理のみ外国人シェフに、という考えがあることをご理解いただければと思います。
なお、留学ビザで滞在する方(週28時間までの制限付き)、日本人の配偶者として在留する方や、ワーキングホリデービザで滞在する方、日本の調理師専門学校を卒業した方などは日本料理店でも勤務することが可能です。
専門料理とシェフ/料理人の国籍の関連性について
原則として日本で考案された日本料理の調理は日本人に、とお伝えしましたが、他国の専門料理のケースも念のため、お伝えします。結論からいうと、中国料理だから中国人、インド料理だからインド人ではないとダメ、ということはありません。
10年以上インド料理店で専門スキルを磨いたネパール人シェフが、日本のインド料理店でインド料理シェフとして「技能」の在留資格/ビザが許可されることもあれば、フレンチシェフとして長年腕を磨いたオーストラリア人シェフが日本のフランス料理店の料理長として許可されることもありえます。
在留期間は?
「技能」のビザ/在留資格で在留可能な期間は、
5年、3年、1年または3か月です。
申請人が新規での申請の場合、1年の在留期間で許可されるケースがほとんどです。
申請から入社までの流れ
ビザ申請から入社までの流れは以下の通りです。
1. 申請人の外国人シェフと労働契約書を結ぶ
この時点では、まだビザの許可がおりるか100%定かではありません。
念のため、契約書上に「本契約は日本国政府により入国許可(在留許可)がおりない場合は発効しないものとする」という文面を入れておくことをお薦めします。
2.「在留資格認定証明書」を国内の入管に申請
後述する必要書類を集めて、申請人の居住予定地、受入れ機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署に申請人の外国人が日本で「技能」の在留資格をもって就労する上で問題がない事を証明する書類、「在留資格認定証明書」を発行してもらえるように申請します。申請から許可までの期間の目安は1か月~3か月です。
この時点でまだ申請人の外国人は海外にいます。
地方出入国在留管理官署
3. 入管の審査期間
書類提出後、申請内容の審査に入ります。
申請から許可までの期間の目安は1か月~3か月です。上場企業の場合、1か月以内に許可が下りる事もあります。
追加資料など求められた場合は、すぐに対応できるようにしましょう。
4.「在留資格認定証明書」の発行と申請人への郵送
無事、「在留資格」の許可が下りたら、「在留資格認定証明書」が届きます。この「在留資格認定証明書」を海外にいる申請人に原本を郵送で送付します。現在地がわかる(トラッキングナンバー付きの) EMS(郵便局の国際スピード郵便)、FEDEX、DHLなどの利用をお薦めします。
在留資格認定証明書の有効期限は3カ月であるため、3か月以内に入国できなければ効力を失ってしまいますので、その点ご注意ください。
5. 査証/ビザの申請
在留資格認定証明書を受け取った申請人の外国人は、出身国又は現在の居住国にある日本大使館又は領事館にて、必要書類を申請し、査証/ビザの申請を行います。申請から許可まで国にもよりますが、5~10営業日程度の場合が多いです。
*技能ビザ申請に必要な書類は申請する国の日本大使館又は領事館のウェブサイトをご確認ください。
海外の日本大使館または領事館
海外の大使館/領事館に「査証/ビザ」の申請、という流れです。
6. 入国審査と在留カードの交付
技能ビザの許可がおりたら、今度は飛行機のチケットを押さえ、いよいよ入国です。技能ビザの有効期限も、在留資格認定証明書と同様発効日から3か月以内であるため、査証/ビザの許可がおりてから3か月以内に入国する必要があります。
日本の空港で在留資格認定書および就労ビザが付いたパスポートを見せ、入国の許可を受けます。新千歳空港,成田空港,羽田空港,中部空港,関西空港,広島空港及び福岡空港においては,この時点で在留カードが交付されます。その他の空港の場合は申請者の外国人の方が各市区町村の窓口に住居地の届出をした後に,在留カードが郵送で送られてきます。
7. 住所登録とマイナンバーの交付
外国人は日本での住居が決まってから14日以内に管轄の役所で「住民登録」を行う必要があります。「住民登録」完了時に、12桁のマイナンバーが付与されます。
*入国時に在留カードが交付されていない方は、住民登録後、在留カードが郵送で送られてきます。
8. 入社
在留カード、マイナンバーを得て、晴れて入社です。
*タイミングによっては、入社後に在留カードやマイナンバーを得る場合もございます。
料金はいくらかかるの?
料金はこちらのページをご確認ください!
「技能」の在留資格/ビザの要件を満たすための7つのポイント
学歴や経歴、人間性などを評価し、せっかく採用が決まった外国人シェフの方でも、結果的に技能ビザが不許可になってしまったら、採用側の事業主にとっても、外国人本人にとっても、何度も繰り返してきたやり取りや面接が水の泡となってしまい、これほど残念なことはありません。
申請者の方がビザの要件を満たす可能性が高いかどうか、事前に確認できる下記7つのチェックポイントを説明させて頂きます。
1. 10年以上の実務経験
熟練した技術を持つシェフであるかどうかを判断する上で、10年以上の実務経験が重要な要件になっています。
きちんとした専門料理店での経験が必要で、レンジでチンするだけのような簡易なファーストフード店などでの経験は、この10年間には含まれません。
また、イタリアンで採用予定のシェフであればイタリアンレストラン(もしくは、イタリアンの調理技術を生かせるレストラン)での経験が10年、インド料理店で採用予定のシェフであれば、インドレストラン(もしくは、インド料理の調理技術を生かせるレストラン)での経験が10年以上必要です。
海外の教育機関において、その専門料理を専攻していた期間がある場合、この10年の実務経験に含むことができます。
例えばフランスの調理に関する教育機関において、フランス料理を2年専攻していた場合、2年の学校での教育機関+8年以上の実務経験があれば、フランス料理店での採用の場合は10年の実務経験を満たす事になるということです。
タイ国籍のタイ料理人は5年の実務経験でOK
タイ料理店で採用するタイ人料理人の場合、要件は下記の通りです。
*タイ料理の調理師国家資格を取得するための要件を満たすために教育機関において教育を受けた期間を含みます
*タイ料理の調理師国家資格は、レベル1とレベル2があり、レベル2が最上位なのですが、レベル1以上を持っていることが必要です。
*タイ人シェフも世界中で働いている方が多いのですが、日本で就労するためには申請の直前1年間はタイ国内で働いていたことが必要です。
なお、上記は原則実務経験10年以上の特例として、タイ国籍のタイ料理人が実務経験5年で認められる場合の条件です。
タイ人もしくはタイ人以外のタイ料理シェフが10年以上の実務経験がある場合は、タイ料理の調理師国家資格のレベル1以上や、申請直前にタイにおいて働いていたことは要件から外れ、他国料理のシェフと同じ要件になります。
2. 外国料理の専門性
日本人のシェフでは代替が不可能、もしくは求められる調理スキルを持っているシェフを日本国内で見つける事が困難、このような場合に外国人シェフに「技能」の在留資格/ビザが許可されます。
どんな料理でも奥深いものですが、その奥深さや専門性、調理の難易度認められない限り、在留資格/ビザは許可されません。入管は単品メニューとともに、海外の食文化や食の歴史をベースとしたコースメニューがあるかどうかが大きな判断材料としています。
コース料理のイメージ(中華)
またラーメンにように、もともと中国起源の料理ですが、海外で考案された料理であっても日本独自に進化を遂げて日本食のカテゴリーに入るメニューに関しては、外国料理とみなされずに在留資格/ビザは許可されませんので、この点もご注意ください。
3. お店の設備や規模
本格派の海外料理を提供するために海外から料理人を招聘するのであれば、それ相応の設備も必ず必要になります。
本格的なナポリピッツアを提供するイタリア専門料理店であれば、ピザを焼く釜、シュハスコ(ブラジリアンバーベキュー)を売りにするブラジル専門料理店であれば、シュハスコ用のグリルが必要になるかと思います。このように専門料理を提供するための設備があるかどうかも、審査ポイントのひとつです。
また、お店のスタッフ人員数やお店の席数も重要な審査ポイントのひとつです。原則的に「技能」で採用された外国人シェフはお皿洗いなどの単純作業を職務として想定されていません。新店舗で外国人シェフ1名だけしか採用が決まっていない状況で、ビザの申請を行っても、調理以外の雑務も外国人シェフが担うのではないかと疑われ、ビザは許可されない可能性が高まります。
また、スタッフ1名のワンオペで回せてしまうような小規模の店舗の場合も、ビザのハードルは高くなります。調理に専念する外国人シェフ以外にオーダーを取るスタッフ、お会計、お皿洗いなどの雑務を行うスタッフが存在し、それらの人件費を賄えるぐらいの売上を立てれるような規模の店舗であることが必要です。
25席程度の席数、というのがひとつの目安になるかと思います。
4. 会社と申請者の間の契約
日本国内の公私の機関とは、一般の会社組織や個人事業主のことを指し、これらの機関と申請者との間で結んだ契約の証明として「内定承諾書」「雇用契約書」「労働条件通知書」などを提出する必要があります。
5. 会社(個人事業)の経営状態
入管が申請時にチェックするポイントしては、会社事業の安定性および継続性です。
申請者の外国人を採用した後、将来にわたり、きちんと給料を支払える財務体質かどうかを見るため、賃借対照表、損益計算書、給与所得の源泉徴収票等の法定調書表を提出する必要があります。
*直近前年度が赤字の場合は許可のハードルが上がります。黒字化までのロードマップを描いた事業計画書の提出が必要です。
*設立間もない新設の会社の場合、決算の書類がないため、事業の先行きを説明するための事業計画書を提出する必要があります。
6. 申請者の給料水準
同じ業務内容、役職にも関わらず男性と女性で給料に差をつける事が許されないように、外国人だからといって不当に給料に差をつける事は許されません。
日本語が話せない、日本での職務経験がない場合でも、「日本人と同等額以上の報酬」を提示することが必要です。
7. 申請者の犯罪歴の有無
素行が善良な外国人のみ受け入れをしたい、という視点から、過去の犯罪歴や逮捕歴もチェックポイントのひとつです。
*入管法第5条第1項第4号には「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、一年以上の懲役若しくは禁錮又はこれらに相当する刑に処せられたことのある者」が上陸拒否事由に該当すると定められています。
8. 1~7の証明
就労ビザの申請の場合、取得の要件を満たしていることの立証責任は申請側にあります。たとえ要件を満たしている事が、事実だとしても、証明できなければ不許可になってしまいます。
また、海外では就労ビザの申請後、「書類」だけではなく、大使館における「面接」における心証も含めて審査する国があったりしますが、日本の場合、書類だけで「許可」「不許可」が判断されます。
申請者の外国人や採用側の会社のアピールポイントを的確に伝え、さらには入管が少しでも疑念を感じるかもしれない点を事前に想定し、追加書類等でしっかり説明しておく必要があります。
以上、まずは<1>~<7>までのポイントをクリアできそうかどうか、ご確認ください。
一番のハードルは実務経験10年以上の証明
上記<1>~<8>の中でもっともハードルが高いのが実務経験10年間以上の証明です。
実務経験を証明するためには在職証明書が必要ですが、過去、一部の心無い方々が偽造の在職証明書でビザを取得しようとしていたこともあり、ただ在職証明書があるだけでは入管はなかなか信用してもらえない場合がございます。
追加資料として、働いていた当時の写真(できればお店の外観や看板が映っているもの)などがあるとベターです。
在職証明書のウラ取りのために、実際に過去勤務していた店舗に入管が電話をかけることもよくあります。
何度電話をかけてもつながらなかったり、電話による在職の確認ができない場合は、提出資料の信ぴょう性を疑われ、不許可になるケースもあります。
すでに閉店している店舗の場合、在職の証明が難しいため、現在も営業を続けており、かつ、在職証明を出してもらえる店舗の勤務年数の合計が10年以上ある方でないと申請しても不許可になってしまう可能性もございます。
申請に必要な書類
会社側が用意するもの
在留資格認定証明書の見本はコチラをご確認ください。
*申請人の経歴と職務内容の関連性および申請人を採用する必要性をアピールする必要があります。
申請者が用意するもの
*所属機関の名称、所在地、電話番号、在籍期間などの情報が必要
*日本語の場合、日本語能力検定試験の合格証明書、英語の場合IELTSやTOEFLのスコアなど
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タイ国籍のタイ料理人で実務5年以上の特例を受ける場合の追加資料
申請から許可までどれくらい?
申請から許可までの期間の目安は1か月~3か月です。上場企業の場合、1か月以内に許可が下りる事もあります。