【はじめての外国人採用 その2】一般企業の外国人採用と就労ビザ
July 25th 2023 Updated
このページは一般企業の採用ご担当者さんや社長さん向けに、一般企業で外国人を採用する際に検討が必要な職務内容別の「在留資格」の例をまとめています。こういう職務内容で外国人を採用したいのだが、どんな「就労ビザ」や「在留資格」が必要なんだろう? そんな疑問をもたれている方にピッタリのページです。
職種と「在留資格」についてご説明する前にまず、教育や経験に基づく「専門職」と、教育や経験を必要としない「単純労働」の違いについてお話させていただきます。
採用ご担当者さんにはぜひ押さえておいて頂きたいポイントのひとつです。
高等教育機関を卒業、もしくは一定の職務経験を経て、その職種のスペシャリストと判断される外国人は積極的に受け入れたい、これが現在の日本政府の外国人受け入れに対する基本的な考えです。
一方、それ以外の外国人の場合、就労の機会を与えることは日本国民の雇用を奪ってしまう可能性もあり、日本の経済社会と国民生活に多大な影響を及ぼすこと等から、国民のコンセンサスを踏まえつつ十分慎重に対応する必要があると考えられています。よって、原則的に、誰にでもできるような単純労働を主な職務として就労することは許されていません。
原則的に、というからには例外もあり、後述する資格外活動許可を得たうえでのアルバイトであったり、身分・地位に基づく在留資格(配偶者等)を得た上での単純労働は許されています。
では、単純労働とは具体的にどのような仕事かというと、下記のような例が挙げられます。
単純作業とみなされる職種の例
飲食業の接客
小売業の接客・レジ
宿泊業のベッドメイキング
配送ドライバー
建設現場の単純作業
工場の流れ作業
単純労働を主な職務とする就労は原則NGだが、例外的に許されるケースはある、という事を頭に入れて頂いた上で以下の内容を読み進めていただければと思います。
一般企業における職種別在留資格の例
一般企業と言っても、IT、コンサルティング、旅行、貿易、宿泊、語学学校、製造、運送など様々な業種があります。IT企業の場合、コンサル会社の場合、といった個別のご説明はまた別の機会にさせて頂き、今回はいわゆるサラリーマンやOLが働く会社の典型、フグ田マスオさんや磯野波平さんが働いているような会社で外国人を採用した場合の想定で話を進めさせていただければと思います。
一般的なオフィスワーク
該当する職種: 営業、マーケティング、経理、経営企画、ITエンジニア、貿易事務、デザイナー、通訳・翻訳、英会話学校の語学教師など
これらのような職種と紐づく在留資格は「技術・人文知識・国際業務」と呼ばれており、一般企業で働く外国人社員にとって、もっともポピュラーな在留資格です。技術・人文知識・国際業務の在留資格を得るためには、就労される方の大学・専門学校等の専攻やこれまでの職務経験と、これから日本で働く会社の職種や職務内容が関連していることが求められます。
技術・人文知識・国際業務(約30万人)の職種例
営業
マーケティング
経理
経営企画
ITエンジニア
貿易事務
デザイナー
翻訳・通訳
英会話学校の語学教師
部長・支店長
部長・支店長などの管理職も、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で採用することは可能です。
いわゆる大企業の部長・支店長であれば「経営・管理」という在留資格を取得したうえで「管理者」として働く事も可能です。
技術・人文知識・国際業務(約30.0万人)
部長・支店長
経営・管理(約2.9万人)
部長・支店長
経営者
経営者で外国人を採用するケースはほとんどないかもしれませんが、こちらもご説明させて頂きます。
経営者としての活動をするために、もっとも一般的な在留資格は「経営・管理」という在留資格です。貿易、IT、宿泊、語学学校など会社の業種は問われません。
経営・管理(約2.9万人)
経営者
高度な知識・経験を生かす職種
高度な知識・経験を生かす職種向けの在留資格として2012年より創設されたのが「高度専門職」です。「学歴」「職歴」「年収」「日本語能力」などの各項目にポイントを設けて、合計70点以上となった外国人材が取得できます。高度専門職は1号と2号があり、2号は1号で3年以上活動をおこなっていた外国人が対象となります。また、1号は活動類型によって(イ)(ロ)(ハ)の3種類に分かれており、前述の職種の中では「オフィスワーク全般」「部長・支店長」は1号(ロ)、「部長・支店長」「経営者」は1号(ハ)の在留資格が回答します。
高度専門職の該当者はハイスペックかつ高学歴な方がほとんどですので、必然的に報酬も高くなります。大手企業のITエンジニア、金融アナリスト、戦略系コンサルタントといった職種が具体例として挙げられるかと思います。
「高度専門職」の在留資格/就労ビザを申請するか、技術・人文知識・国際業務の在留資格を申請するかは、雇用される外国人の希望などにもよるのですが、要件を十分に満たすような学歴・経歴の方を採用される場合は「高度専門職」で申請されたほうが、審査期間も短く、職種に関しても「技人国」と比べてフレキシブルに働く事ができる、などのメリットがあります。
高度専門職1号・2号(約1.7万人)
高度な専門的知識・経験を有する職種
企業内転勤
転勤という職種は存在しないのですが、日本に本店もしくは支店のある海外の企業から日本の事業所に一定期間転勤して働く場合の在留資格が「企業内転勤」です。
この転勤ケースであれば、「一般的なオフィスワーク」「部長・支店長」の職種の場合でも「企業内転勤」の在留資格でも就労可能です。
企業内転勤(約1.1万人)
外国の事業所から国内の関連企業への転勤者
以上、一般企業における職種と在留資格に関して述べてきましたが、これまでの内容を表にまとめたものが以下の通りです。
(表の在留資格と職種に関してはあくまでも一般論のイメージを記載しており、ケースバイケースで例外もございます)
条件付きで単純労働を含め柔軟に働ける在留資格
日本における外国人の単純労働を主とする就労は原則許されていないとお伝えしましたが、ここでは条件付きで単純労働が許されるいくつかの在留資格を紹介いたします。
資格外活動 / 留学、家族滞在など
資格外活動とは、本来の在留資格の活動を阻害しない範囲内(原則1週間で28時間以内)で、相当と認められる場合に報酬を受ける活動のことで、多くの方は「留学」の在留資格で日本に滞在する留学生です。
コンビニや小売の接客業務で活躍されている留学生の姿を見たことはあるかと思いますが、彼らは資格外活動の許可を得たうえで就労しています。本来の在留資格の活動を阻害しない範囲で、という条件付きであるため、フルタイムで働くことはできません。
留学(約26.1万人)
大学、短大、専門学校、高校、中学、小学校などに通う学生
家族滞在(約21万人)
在留外国人が扶養する配偶者・子
特定活動5号および5号2 / ワーキングホリデー
ワーキングホリデーとは、日本で一定期間(1年の場合がほとんどです)の休暇を過ごし、その滞在費を補うために就労することを認める制度です。日本は2020年現在26か国・地域とワーキングホリデーの協定を結んでいます。
最長1年という限られた期間であるため、フルタイムでの採用はほとんどありませんが、滞在費を補う目的の上での単純労働は認められています。
日本語の能力の有無に関係なく取得できる在留資格であるため、日本語が堪能でない場合は、訪日外国人が多く訪れる観光地の土産物店や飲食店などで母国語、英語、そして少しの日本語を交えながら働いている方が多いです。
特定活動 5号及び5号2(約1.5万人)
ワーキングホリデー保持者
特定活動46号
2019年5月より新設された在留資格です。日本の大学および大学院を卒業し、日本語能力がJLPTでN-1もしくは同等以上で、日本語を用いた業務である事などの条件付きにはなりますが、単純労働を含めた職種で働くことが可能です。
小売業の最前線の現場で働ける人材が期待されているため、「接客」ビザなどとも呼ばれています。
特定活動46号 (人数データなし)
日本の大学・大学院を卒業し、かつ日本語能力がネイティブレベルの方
特定技能1号・2号
人材不足が深刻な14の特定産業分野に限り、必要とされる技能水準とJLPT N-4相当(日常会話レベル)以上の日本語能力があれば単純労働を含めた就労が認められる、2019年にスタートした新しい資格です。
【特定技能1号】
特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
就労可能な産業分野
介護
ビルクリーニング
素形材産業
産業機械製造業
電気・電子情報関連産業
建設
造船・舶用工業
自動車整備
航空
宿泊
農業
漁業
飲食料品製造業
外食業
【特定技能2号】
特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
就労可能な産業分野
建設
造船・舶用工業
特定技能1号・2号 (約8.7万人)
人材が慢性的に不足している14種の特定産業分野において、相当程度の知識又は経験を要する技能を要する業務(2号の場合は、熟練した技能を要する業務)
以上、条件付きで単純労働が可能な在留資格について、これまでの内容を表にまとめたものが以下の通りです。
なお、資格外活動、ワーキングホリデー、特定活動46号、特定技能の在留資格でマネージメント以上の職務に就くことはあまり想定されませんので、記載を省いております。
また資格外活動許可を得ている留学生や家族滞在者等が、一般のオフィスワークを他の正社員と同様に働く事も就労制限がある以上不可能であるため、こちらも記載を省いております。
(あくまでも一般論での想定であるため、個々のケースで例外の可能性はございます)
あらゆる職種で就労可能な在留資格「身分・地位に基づく在留資格」
身分や地位に基づく在留資格とは、「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」のように職種に紐づく在留資格ではなく、日本人の配偶者や永住権を得たものなど、その身分や地位に基づいて与えられる在留資格です。在留中の活動に制限はなく、アルバイトも正社員も、また単純労働、一般的なオフィスワーク、部長、支店長、経営、などあらゆる職種で就労することが可能です。
下記4種類の在留資格が該当します。
永住者 (約84.6万人)
法務大臣から永住の許可を受けた者
日本人の配偶者等 (約14.4万人)
日本人の配偶者・子・特別養子
永住者の配偶者等 (約4.6万人)
永住者・特別永住者の配偶者及び日本で出生し引き続き在留している子
定住者 (約20.2万人)
日系ブラジル人、ペルー人など、特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者
これは表にするまでもないですが、すべての職種に制限のない資格が身分・地位に基づく資格です。
職務内容と在留資格に関して、イメージできましたでしょうか?