【経営・管理 | 就労ビザ許可のポイント-2】すでに日本にいる外国人が、ビザを変更して起業する場合
February 10th 2021 Updated
このページでは、日本にいる外国人が日本で起業し、資本金500万円以上を用意して、経営者として働く際に必要な「経営・管理」の在留資格/ビザに変更する際のポイントについて説明させていただきます。
在留資格「経営・管理」とは、端的にいうと日本で経営者として事業を行うためのビザ/在留資格です。事業の内容は貿易でも、ITでも、マッサージ店でも、飲食業でも構いません。
自ら起業した経営者だけではなく、すでに存在している会社で、経営や会社の業務執行に携わる取締役や支店長クラスの方もこの在留資格の許可対象にはなりますが、今回は日本で自ら起業し、経営者として働きたい方向けの記事を書かせていただきます。
「経営・管理」の就労ビザで働く外国人はどのくらいいる?
2020年版「出入国在留管理」日本語版 出入国在留管理庁によると、2019年現在、約2.7万人の外国人が「経営・管理」の在留資格で日本に滞在し、就労しています。
在留期間は?
「経営・管理」のビザ/在留資格で在留可能な期間は、
5年、3年、1年、4ヶ月、3ヶ月
です。
通常新規での申請は1年の在留期間で許可されるケースが多いですが、これまでの職務経歴や事業計画、事業への準備などが評価された場合は3年以上の在留期間が許可される場合もございます。
入管の要件を満たす限り、何度でも更新可能です。
学歴、職務経歴はマストではありません
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格/ビザを申請する際は申請人の学歴(日本の大学、専門学校、海外の大学)、もしくは職歴(職種によって3年もしくは10年)が必要とされます。
一方、「経営・管理」の在留資格/ビザの許可要件に「学歴」や「職歴」を含まれていません。「学歴」や「職歴」が全くない場合許可のハードルは上がりますが、事前準備の上、入管が納得する事業計画と必要書類を提出することで、在留許可はおります。
会社設立前の注意点
しっかりとした事業計画を
いつ、どこで、だれが、どのような事業をやりたいのか、なぜその事業をやりたいのか。マーケットの分析と自社(申請人)の強みは?銀行融資時に提出する事業計画書よりも、在留資格を得るために必要な事業契約書の難易度は低いですが、かといって甘い見込みで作成した計画ではせっかく在留資格を得ても、事業が行き詰まってしまう可能性もあります。
時間をかけて、事業計画を練ってください。
資本金形成を証明する資料を用意しておく
申請人自らが、500万円以上の資本金を用意し、国内の銀行口座に資金を移動したことの証明として、下記2つの資料が必要となります。
どうやって500万円以上の資本金を用意したのかを証明する資料
申請人ご自身で500万円以上用意された場合は、在職証明書や収入証明書、海外の銀行口座残高、その他不動産や金融資産の財産を証明する書類を提出することで「申請人自身が500万以上の資金を形成したことを証明する資料」が必要です。
また、ご家族やご友人からお金を借りた場合は、貸してくれた方と申請人の間での「借用書」、そして貸してくれた方がそれだけの資金を形成できたことを証明する収入証明や財産証明が必要となります。
形成された500万以上の資本金が日本の銀行口座に移動したことを証明する資料
資金移動の疎明資料としてもっともポピュラーなものは、銀行の通帳の送金履歴のコピーや着金履歴のコピー、海外から送金の場合は送金の通知書等ですが、海外送金が難しいという国の方の場合、現金を手持ちの場合も考えられます。100万円以上の金額の場合には税関申告の義務があるため、税関の申告書も、資本金移動の疎明資料のひとつになります。
形成された500万がどのように日本の銀行口座に移動したのか、それを証明する資料はすべて取っておいてください。
事務所を抑えること
「経営・管理」の在留資格で経営者として働く場合、その会社の事務所には一定の条件があります。まずは、事務所の賃貸借契約書の使用目的が「事務所」で「法人名義」での契約であること、そして、事務所の独立性が保たれていること、もう一つが、申請内容に合う事務所であること、です。
契約書上の使用目的で名義について
賃貸借契約書上の使用目的は「事務所」で「法人名義」であることが必要です。申請者が海外にいる場合でも、会社登記後は法人名義で賃貸借契約書を結ぶことが多いです。個人名での契約や使用目的が「住居」の場合は、申請時に問題視される可能性もありますので、ご注意ください。
事務所の独立性について
日本人が起業する場合、また、「永住者」「日本人の配偶者等」「定住者」など身分系の在留資格を持つ外国人が起業する場合は、いわゆるシェアオフィスでの起業も可能です。しかし、「経営・管理」の在留資格の申請に伴う起業の場合は、事務所の独立性が求められ、個室であることが最低条件となります。いわゆるシェアオフィスでも、壁に仕切られ部屋にドアがついている独立性の高い個室の場合は要件を満たす可能性もあります。
また、飲食業での起業の場合は、飲食店内に独立性の高い事務作業用の部屋を用意するか、もしくは飲食店物件と別途、オフィス用の事務所を用意する事が必要です。
申請内容に合う事務所とは
例えば申請人一人が代表取締役としてPC1台で仕事ができるIT系の事業を立ち上げる場合、事務所のスペースは狭くても構いません。一方、申請人と別途複数名採用する予定で貿易会社を立ち上げる申請内容にも関わらず、複数名が働けるほどのスペースがなかったり、在庫を確保するスペースがなかった場合には、申請内容にふさわしい事務所であると判断されずに問題視される可能性があります。
申請人ができる職務内容の把握と採用計画について
経営者として、会社を経営するための在留資格/ビザ【経営・管理】を申請するわけですので、申請人の活動は原則的に経営に携わる活動のみ認められています。
もちろん、経営者が現場の仕事に従事する事もありますので、線引きは難しいところですが、少なくとも主たる活動は、経営者として会社を拡大させていく職務内容であるべき、というのが入管の考え方であるといえます。
例えばですが、飲食店の経営者として【経営・管理】の在留資格/ビザを申請している場合、少なくとも調理ができるシェフとホールスタッフの採用が決まっていないと、誰が店舗業務に携わるのか、経営者自ら皿洗いとか、接客するのではないかとあらぬ疑いをかけられてしまう事になります。
同様の例で、マッサージ店の経営者として【経営・管理】の在留資格/ビザを申請している場合、少なくともマッサージができるスタッフの採用が決まっていないと、経営者自らマッサージや接客するのではないかとあらぬ疑いをかけられてしまう事になります。
【経営・管理】の在留資格で申請人ができる活動を踏まえた上で、仕事の業種や事業計画に合わせた採用計画を練る必要があります。
会社設立までの流れ
会社設立までの流れは以下の通りです。
(個々のケースにより、順番は変わる可能性があります)
1. 日本で設立する会社の詳細を確定
会社名や法人の種類(株式会社なのか合同会社なのか)、会社所在地、会社の事業内容、資本金の額、資本金振込先の銀行口座など、会社設立までの流れを決めます。
2. 事業用事務所の確保
この時点では法人設立前ですので、法人名義で賃貸借契約を結ぶことはできません。そのため、まずは会社を設立する申請人が個人で契約し、契約時に会社設立後は法人契約になる旨を特約として契約書に入れておく、などのイレギュラーな対応が必要となる場合もあります。
3. 会社の定款作成と公証役場における認証手続き
定款とは会社のルールを明文化した書類のことで、具体的には以下のような項目を記載します。
・商号
・本店の所在地
・設立に際して出資される財産の価額または最低額
・発起人の氏名または名称および住所
・発行可能株式総数
定款を作成後は、公証役場で公証人に定款が有効か、チェックして認めてもらう必要があります。 これが定款認証と呼ばれるものです。公証人の認証を得てから、定款は有効となります。
4. 資金の移動
原則、申請人が、ご自身の国内の銀行口座に500万以上の資本金を振り込みをすることが必要です。
5. 会社登記書類の作成と法務局への登記
登記申請書類とともに申請人または協力者の印鑑証明書(もしくはサイン証明書)が必要となります。
登記完了日が登記簿上の会社設立日となり、これで会社設立となります。
6. 各役所への届出
会社登記が終わったら、次は各役所に会社設立に伴う届出をする必要があります。
・税務に関して税務署に届出
・地方税に関して都道府県税事務所に届け出
・社会保険に関して年金事務所に届出
・労働保険に関して労働基準監督署とハローワークに届出
※申請先は各ケースによって異なる場合がございます。
7. 会社の事業スタートに向けた準備
経営管理の在留資格の許可をスムーズに得るためには、申請許可後、すぐに事業がスタートできるように、できる限り準備を整えておくことが必要です。
PCやFAXなど事務用品の購入、創業間もない会社の事業の安定性の疎明資料として取引先との取引契約の締結、従業員の確保と労働契約書の作成、など、「経営・管理」の在留資格の申請前に進めておく必要があります。
在留資格申請の流れ
1.「在留資格変更許可」を国内の出入国在留管理庁(入管)に申請
後述する必要書類を集めて、申請人の現住所を管轄する地方出入国在留管理官署(通称 入管)に赴き、現在の在留資格/ビザから「経営・管理」の在留資格/ビザに変更する手続き「在留資格変更許可申請」を行います。
この時点でまだ申請人は経営に関する活動はできません!
地方出入国在留管理官署 (通称 入管)
2. 入管の審査期間
書類提出後、申請内容の審査に入ります。
申請から許可までの期間の目安は2週間~4週間です。
追加資料など求められた場合は、すぐに対応できるようにしましょう。
3. 申請結果の通知
許可、不許可の結果は、通常ハガキにて申請人、もしくは行政書士などの申請取次者に通知されます。
在留資格の「変更」の場合、ハガキに許可、不許可は明示されておらず、入管に出頭する必要がありますが、ハガキの記載内容で許可、不許可はある程度推測できます。
ハガキの手数料の該当箇所にチェックマークがつけられる場合、手数料を払う必要があるということで、ほぼ100%、許可で間違いありません。
不許可の場合は手数料に関する記載はなく、出頭してほしい旨だけ記載してあります。
ハガキを郵送した段階で、許可か不許可か明示しない理由としては、在留資格変更の申請の場合、申請者が国内にいるため、不許可が分かった段階で逃走する恐れがあるため、と言われています。
ご参考までに新規で在留資格の「認定」を得る申請の場合、申請人はまだ海外にいるため、許可、不許可は郵送の書類で国内の申請者に伝えられます。
(申請人が海外にいるため逃亡のリスクがないためです)
なお、入管で不許可を伝えられた場合、丁寧に不許可理由を探る必要があり、リカバリーの可能性をさぐりながら再申請の準備を進めます。
4. 変更後の在留カードの受け取り
ハガキ、パスポート、現在の在留カードを持って入国管理局に行き、手数料4,000円を収入印紙で納付します。
現在の在留カードと引き換えに就労可能な在留カードを受け取り、これで在留資格変更の作業は終了です。
地方出入国在留管理官署 (通称 入管)
5. 事業のスタート
在留カードをもらって、晴れて事業スタートです。
社会保険の届け出など、忘れずにご対応ください。
料金はいくらかかるの?
料金はこちらのページをご確認ください!
申請に必要な書類
会社側が用意するもの
在留資格変更許可申請書の見本はコチラをご確認ください。
※定款に記載されいている場合は定款の提出、株主総会で役員報酬を定めた場合はその議事録が必要です。
※申請人の在留資格許可後、すぐに事業がスタートできることを示す資料として取引に関する契約書などが必要です。
※事務所の独立性や事業内容に合った事務所であることを証明する資料として、写真の提出が必要です。
※申請の自己資金であれば、申請人の在職証明書、収入証明書、銀行残高証明書などが該当します。資本金を借りた場合は、借用書および貸してくれた人と申請人の関係性を疎明する資料が必要です。
※海外から送金した場合は、海外送金を証明する書類などが必要です。
申請人が用意するもの
※在職証明書、退職証明書、ビジネス関係者からの推薦状などが該当します。
*日本語の場合、日本語能力検定試験の合格証明書など
*英語の場合IELTSやTOEFLのスコアなど
申請人が経営する会社で就労する従業員がいる場合
※日本人であれば運転免許証、外国人であれば在留カードなど
申請から許可までどれくらい?
法務省が発表している入国管理局の標準処理期間は、2週間から1か月となっていますが、実際には1か月~2か月程度が平均です。