フリーランスのエンジニア向け 就労ビザ取得の注意点
2022年1月22日(土)
日本企業の働き方改革の推進の結果なのか、ここ数年、外国人ITエンジニアでも雇用契約から業務委託契約に切り替わり、いわゆるフリーランスのエンジニアとして働く方が増えてきたようです。
結論からいうと、フリーランスでもいわゆる就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)の取得は可能ですが、在留活動の継続性・安定性という点で、雇用契約で企業に勤めているよりも審査は厳しくなる傾向があります。
今回は、フリーランスのITエンジニアのビザ/在留資格について説明したいと思います。
フリーランスでも就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)が取れる、と書きましたが、ここにはいくつかの条件があります。そのうちのひとつが「本邦の公私の機関との契約に基づくものであること」である、ということです。
フリーランスという言葉だけ聞くと自由にエンジニアとしての活動ができるように聞こえるかもしれませんが、あくまでも日本国内の法人や個人事業主と契約を結び、契約に基づきITエンジニアとしての活動を行う必要があります。
こちらは「技術・人文知識・国際業務」の在留資格更新時の申請書ですが、フリーランスであっても、所属機関の記載と契約書の提出は求められますので、その点ご留意ください。
所属機関との契約とは?
では所属機関との契約に関して、在留資格申請時に考えるべきは、雇用契約、そして委任契約、請負契約のどれに該当するのか、という点です。
いわゆるフリーランスと呼ばれる方々は上記のうちの委任契約、請負契約に該当し、一般的には業務委託契約と呼ばれています。
下記の通り、申請書に契約の形態は記載する必要があります。
雇用契約とは?
分かりやすく言うと、会社内の労働者(社員)として働いており、労働法上の保護を受ける対象者です。
個人と会社で労働契約を結び、一般的に毎月給与明細とともに給料をもらいます。
入管の視点で考えると、雇用契約を結んでいる社員は、労働法の保護も受けることができ、毎月安定的に給与をもらえるので、活動の安定性は認めやすい、というわけです。
委任契約とは?
業務委託契約のうち、業務の遂行を目的とした契約を「委任契約」といいます。
会社の業務を「労働者」としてではなく、外部の人間としてアウトソースされるような場合が該当します。
会社の「労働者」ではないため、エンジニアの方ご自身で請求書を作成し、その請求書に基づき、報酬が支払われるようなイメージです。
請負契約とは?
請負契約とは、ある業務を完成させ、成果物を納品することで報酬がもらえる契約です。例えば、ソフトウェアの開発に関し、請負契約を結んだ場合は、ソフトウェアを完成させて納品することで初めて報酬をもらえる、ということになります。
外部の人間として業務を請負い、成果物を納品後に請求書を発行し、報酬を受け取るイメージです。
会社内部の雇用者としての雇用契約でも、会社外部の委任契約でも請負契約でも、本邦の公私の機関との契約に基づくものであることに変わりはありません。
ただ、委任契約や請負契約の場合、雇用契約と比べ、契約を切られやすいこともあるため、在留資格の審査上の活動の安定性や継続性の面で厳しめに審査される、ということです。
活動の安定性や継続性について
フリーランスで働く方の場合、1社から安定的に業務委託費をもらうケースもあれば、複数社から少しずつ業務委託費をもらうケースもあるかと思います。
フリーランスでのビザ申請を検討の方は、以下の点に問題がないか、ご確認ください。
契約書の有無
仲のよい友人や会社から仕事をもらっている、という方からご相談を頂きますが、在留資格/ビザの許可を取るためにはきちんとした契約書が必要です。
口頭でのやりとりだけでは認められませんので、必ず契約書を交わしてください。
契約書上報酬と契約期間
では、どんな契約書でもいいのか、というとそういうわけではなく、エンジニアとしての今後の活動の安定性・継続性が認められる契約書であることが必要です。
原則的に技術・人文知識・国際業務の在留期間は1年・3年・5年ですから、例えば、単発の1週間程度の短期プロジェクトの業務委託契約書(単発で20万円)だけ締結している、という場合、今後1週間のプロジェクトで20万円しか稼ぐアテがないのに、エンジニアとして安定して生活していけるのか疑問視される可能性がある、ということです。
少なくとも1社、最低1年以上の業務委託契約を所属機関と結び、毎月安定的にエンジニアとしての仕事の保証がある状況が望ましいです。報酬で言うと月25万以上、年間300万程度が目安と言われていますが、この目安は業務内容や申請人のこれまでの経歴などによっても異なってきます。
もちろん、所属機関からの収入が高かったり、複数社と業務委託契約がある場合は、活動の安定性・継続性という面でよりポジティブな評価となります。
長期の業務委託契約が交わせない場合
次の更新時には3年の在留期間がほしいのだけれど、契約先とは1年更新の業務委託契約しか交わせなかったという場合は、他の資料で活動の安定性・継続性を疎明するしかありません。
ITエンジニアとしての知識を学んできた大学・専門学校の成績証明書、資格、これまで業務委託を受けてきた取引先との契約書、請求書、納品書、過去の売上を疎明する確定申告書などを提出し、契約書上は1年であっても、長期で継続的にエンジニアとして働くだけのスキルや実績があることを入管にアピールする必要があります。
不特定多数にサービスを販売する場合は?
例えば、ある会社から依頼を受けて契約書を交わした上でアプリを開発する場合、これは「技術・人文知識・国際業務」の活動として認められます。
一方で、個人でアプリを開発し、これを不特定多数に販売する場合、これは公私の機関との契約に基づく活動には該当しない可能性が高く、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格/ビザではなく「経営・管理」の在留資格/ビザの取得を考える必要があります。
その他の注意点は?
少なくとも過去1年間の住民性の支払いや、すでに個人事業主として働いている方は確定申告をし納税義務を果たしているかどうかもチェックされます。
フリーランスの方の場合、提出する資料の種類も異なり、の数も多くなり、申請も少し複雑になります。ご質問などありましたら、お気軽にご相談ください。